Engineer Lab部の新卒LT発表会と部内懇親会の紹介


Loading...

はじめに

はじめまして! KADOKAWA Connectedに2021年新卒として入社したEngineer Lab部の池田です。

Engineer Lab部は、KADOKAWA Connected内でシステム開発を担っている部署*1で、私を含めて5名の新卒が配属されました。

Engineer Lab部の業務は基本的にフルリモートで行われています。リモートワークには良い面も悪い面もありますが、よく言われる悪い面のひとつとしてコミュニケーションの問題が挙げられると思います。Engineer Lab部でもそれは例外ではなく、新卒の育成という観点でも、次のような課題がありました。

  • 同じ部にいながら一度も話したことのない先輩社員もいるなど、配属されたチームのメンバー以外との交流が起きにくい
    • 初めての相手とのコミュニケーションの心理的なハードルを高く感じるなど、業務にも悪影響がある
    • 困ったことがあったときに頼れる相手が限られる
    • 新しい学習機会が生まれにくい
  • 新卒同士も互いにどのような業務をしているのかよく知らない
    • 互いに刺激しあうことで生まれる成長機会が発生しない

 

これらの問題の解決のために、Engineer Lab部では新卒育成の取り組みも兼ねて「新卒LT発表会」+「部内懇親会」を開催しています。今回の記事ではこの取り組みについて紹介します。

新卒LT発表会

Engineer Lab部では、3ヶ月ごとに新卒メンバーを発表者としたリモートの発表会を開催しています *2

前回は2021年9月末にramp up報告会と題して、7月1日に配属になった私たち新卒メンバーが3ヶ月のramp upプログラム*3で取り組んだことや学んだこと、今後やりたいことなどについて発表する会が行われました。

新卒の中には人前での発表経験があまり無い人もおり、発表機会を多く用意することで新卒メンバーの発表スキルを上げていこうという取り組みでもあります。

今回は技術系LT発表会ということで、12月末に以下のルールでオンライン上で発表会を行いました。

  • 持ち時間12分/+質疑応答5分で発表
  • 発表テーマは各自メンターと相談して決定

先輩社員の参加は必須ではありませんでしたが、およそ15名弱のメンバーに参加いただき、LT発表会を行うことができました。

新卒同士としても、お互いが普段何をしているのか、何に興味があるのかを知り、相互理解を深めるいい機会となりました。 また、質疑応答の時間には先輩社員の方々からの質問や業務目線での鋭いコメントなどもいただき、大変有意義な会になりました。

発表内容は5つあり、同期の猪股さんと私池田の感想をいれつつ発表内容をご紹介します。

①「冴えないCSPの壊し方」

1人目の方はCSP(Content Security Policy)についての発表でした。

CSPとは、JavaScriptやCSS等のリソースの読み込みを制限することで、XSS等の攻撃を軽減するためのブラウザセキュリティ機構のことだそうです。

今回の発表では、 HTTPのCSPヘッダーにおける設定についての簡単な説明がされた後、デモが行われました。

デモの前半ではCSPヘッダーを正しく設定することでXSS攻撃が防げることが説明され、後半では設定を正しく行わないとXSS攻撃を受けうることが説明されました。

CSP発表スライド
①発表スライドから抜粋

感想

  • セキュリティ対策について無知でしたが、実演が多くて雰囲気が掴める発表でした。コードに脆弱性があったとしてもブラウザの側で攻撃を防ぐ機構がある、というのは初めて聞く話で勉強になりました。(猪股)
  • CSPを初めて知ったので、こんなセキュリティ対策の手法があるのかと勉強になりました。あまり業務ではこういった領域には触れていないのですが、外部のJavaScriptを読み込まずにWebサイトを作るのは現実的には厳しいと思いますし、こういった手法も使ってセキュアなWebサイトを構築できるようにしていかなければと思いました。(池田)

②「エッセンスだけわかる 位相空間論の基礎の基礎」

猪股さんは位相空間論についての発表をしました。関数の連続性から出発し、位相空間の定義にたどり着くことを目標としました。

具体的には、関数の連続性が「任意の開集合の逆像が開集合になる」という命題と同値であることを証明し、写像の連続性の定義には「開集合」という概念が鍵となることを説明しました。そして「開集合を列挙したもの」として位相の概念を導入しました。

今回の発表では予備知識を持たない人がいることを考慮し、位相空間の厳密な定義は簡単に提示するに留め、位相という概念のエッセンスを伝えることを優先しました。

位相空間発表スライド
②発表スライドより抜粋

感想

  • 「数学=計算」という誤解を受けることが多く、その偏見を払拭したいという思いでこの題材を選びました。 数学の話に不慣れな人々に楽しく聞いてもらえるか不安でしたが、「よくわからないけど面白かった」など肯定的な感想を多くいただき、それだけでも話した甲斐があったなと思いました。(猪股)
  • 今回の発表会で一番楽しかった発表でした。聴衆の頭の上に「?」が浮かんでいる様子が目に見えるようでしたが、そういった発表テーマでも面白く発表してしまうところが猪股さんのすごいところだと思います。(池田)

③「Dockerを使ってアプリ開発をしたので使用感について話す」

3人目の方はDockerについての発表でした。

Dockerを業務で使ったことのなかった発表者が、Dockerを使ってWebアプリケーション開発をした上で、その流れや苦労した点を説明してくれました。

Dockerを使うメリットとしては特に、「ローカルサーバー用の環境構築がローカル環境を汚すことなく試行錯誤できること」が挙げられていました。

一方、Dockerfile構成が明確に決まらない点に苦労したらしく、最終的に決定した構成にも自信が持てていないと語っていました。

③発表スライド
③発表スライドから抜粋

感想

  • 発表者と同じく研修でしかDockerに触れたことがないので、Dockerの使用感などの話が聞けて非常に有意義でした。後半のDockerfile構成の話は知識不足でよくわかりませんでしたが、つまずきやすいポイントがそこにあるとわかっただけでも収穫だったかなと思います。(猪股)
  • サーバーレスには興味がありつつ、いまだ手を出せていなかったので、こうやって開発するものなのだなあと思いながら聞いていました。Visual Studio CodeのDev Containerの話もされていて、普段はvimを使っている身としても少し心動かされるものがありました。(池田)

④「Oracle Databaseと仲良くなるためにしたこと5選」

4人目の方はOracle Databaseについての発表でした。

業務でOracle Databaseを触る必要に迫られたものの、これまではNoSQL中心で、RDBにはほとんど触ってきていない!

となった発表者がOracle Databaseと友達になるために行ったことについて、学んだことや経験談を話してくれました。

規模の大きな製品なので、1から学んでいくとなるとなかなか大変そうにも見えましたが、試行錯誤のなかで見つけたツールや勉強方法が分かりやすくまとめられていると同時に、Oracle Databaseの機能もいろいろと紹介されており、ためになる発表でした。

④発表スライド
④発表スライドから抜粋

感想

  • 今後Oracle Databaseを触る可能性があるので、積極的に参考にしようと思う発表でした。ドキッとしたのは「4. アンチパターンを知る」で、普段普通にやっていることがアンチパターンに挙がっていたことです……。紹介されていた本、近いうちに読みます。(池田)
  • 発表の中で、ドキュメントを読むときはエディション違いに気をつけましょうという自戒を込めた話がありました。そのときはたいして気にも留めずに聞いていたのですが、その数週間後に同じようなミスをしかけていた、という事案がありました。ミスに気づけたのはこの発表を聞いていたおかげで、こういうところにもLT発表会の意義があるなと感じました。(猪股)

⑤「RustでWebアプリ開発 〜サーバとクライアントどっちもRustで書く〜」

最後のプレゼンは私で、個人的に好きなプログラミング言語であるRustについての発表をしました。

部内でRustが使われているわけではないので、まずRustの概要を説明した後、Rustの特徴である所有権とライフタイムについて、それらのおかげで防げるメモリ管理ミスをC++のコードと比較しながら紹介しました。

また、Webアプリケーション開発に使われるcrate*4をバックエンド・フロントエンドの両方について周辺技術(非同期ランタイムやWebAssembly)も含めて紹介した後、発表用に作成したアプリ*5の紹介と開発の感想を発表しました。

Rust発表スライド
⑤発表スライドから抜粋

感想

  • 部内にRustを広める野望があるので、その第一弾としてRustの良さを伝えたいと思って発表しました。ちょっと内容を詰め込みすぎてしまったのが反省点ではありますが、今後の布教に繋げていきたいです。発表ではほとんど紹介できなかったのですが、Rustでのアプリ開発楽しかったです。(池田)
  • メモリ管理という概念を知らずに発表を聞いていたのであまりピンときていない部分もありますが、どうやらこれまでは人間が気をつけて行うしかなかったことが、Rustならコンパイルエラーとして検知できるという話のようでした。また、周辺ライブラリも着々と増えてきているようで、将来的に触る機会があるかもしれないなと思わされました。(猪股)

部内懇親会

3ヶ月ごとの発表会の後には、部内懇親会を行っています。懇親会の提案は新卒側から出たもので、運営も新卒が行っています*6。食べたり飲んだりしつつ、業務の話から趣味の話まで幅広く話しながら懇親を深める会になっています。

LT発表会から引き続いておよそ15名〜20名程度が参加する会なので、満遍なく交流が行えるようにするために3名〜4名のグループを5つ作り、それを3セッション回す形式で行いました。

グループ分けは事前に新卒5人で会議を行って決めました。先述の「一度も話したことのない先輩社員の方がいる」という課題を解決するために、業務での関わりがない方となるべく多く話せるように調整を行いました。

会話デッキとグループ分けのスクリーンショット
会話デッキとグループ分け

小グループでのビデオ通話のやり方には様々ありますが、この懇親会ではSpatial Chatを使用しています。 Spatial Chatだと他のグループの様子も遠くから見ることができるので、「急な予定で参加できない人がいて1on1になっちゃった」のようなケースで、急遽隣のグループと合体するような調整もしやすかったのが良い点だと思います。

また、上述のグループ分け会議の際に、同時に「会話デッキ」の作成も行っています。会話に沈黙が訪れたとき*7のお助けツールであると同時に、せっかくの先輩社員と話すことができる場なので、どのようなことを聞きたいか事前に考えておくという意味でも役に立っています。

おわりに

以上、Engineer Lab部での新卒育成と部内交流の取り組みについて紹介しました。

新卒LT発表会はセキュリティ・数学・インフラ・データベース・プログラミング言語とバラバラのテーマでの発表となっており、Engineer Lab部の幅の広さが表れているのではないかと思います。

さいごに、

KADOKAWA Connectedでは、現在新卒3期生の採用活動も実施しております。

KADOKAWAグループのエンジニアリングに少しでもご興味がある新卒の方は是非エントリーください。ご応募をお待ちしております!

○2023年新卒採用(エンジニア) - 株式会社KADOKAWA Connected

*1:詳しくはKADOKAWA Connectedのシステム開発を担うEngineer Lab部の仕事とは? - KADOKAWA Connected Engineering Blogをご覧ください。

*2:といっても今回でまだ2回目なので、「する予定です」が正しい表現かもしれません。

*3:当社では新規入社者や部門に配属になった新卒のオンボーディングを目的として、上長による3ヶ月のramp upプログラムの計画・実施を行っています。

*4:他の言語でいうライブラリのようなもの。

*5:バックエンドにaxum、フロントエンドにyewを使いました。

*6:Oracle Databaseの発表をした同期が運営をしてくれています。感謝!

*7:ありますよね!