Google 社の Japan Executive Summit に行ってみた


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こんにちは、Chief Data Officer(CDO)の塚本です。

この記事では、2023-10-24〜2023-10-25にアメリカ合衆国カリフォルニア州マウンテンビューで行われたJapan Executive Summitに参加した経験をもとに

  • KADOKAWA Connectedにおける海外出張について
  • マウンテンビューおよびGoogleplexで感じたことについて
  • AI技術活用の展望について

紹介させていただきます。

背景:Japan Executive Summitとは

Japan Executive Summitは、Google CloudおよびGoogle広告を利用している企業の経営層をGoogle本社(Googleplex)に招待し、Google CloudおよびGoogle広告に関する最新情報と参加者間の懇親の場を提供するイベントです。

今回は「AI」がテーマとのことだったので、Chief Data Officerの僕も参加させていただくことになりました。

KADOKAWA Connectedの海外出張について

KADOKAWA Connectedでは、Chief Officerのような経営層に限らず、海外出張を行うことが認められています。AWS re:InventSnowdayCDP Worldなど、KADOKAWAグループに還元できる情報や経験を手に入れるためであれば、特定のベンダーに依らずカンファレンスやイベントに参加できます。

具体的な出張規程は変化するかもしれませんので割愛しますが、KADOKAWA Connectedでは、他の企業と同じく精算可能な旅費・宿泊費・日当が定められており、一定額まで経費として費用を賄ってもらえます。

とはいえ、海外出張は非常にお金がかかりますから、個人的には「新機能や事例の紹介」というような情報を得に行くというよりは、異文化体験やネットワーキングといった出張でしか得られない経験を得に行く方が重要だと思っています。

マウンテンビューおよびGoogleplexで感じたことについて

マウンテンビュー

初めての海外出張でしたので、非常に沢山の刺激がありました。

最初に驚いたのは、アメリカ(特にマウンテンビュー)は想像以上に車社会だということでした。日本(特に東京都)は、高層ビルが立ち並び縦に伸びた都市ですが、アメリカは低層の建物ばかりで横に伸びた都市でした。

都市が横に伸びていることもあって、日本では見ない車線数の道路があったり、Googleplexにも大量の駐車場があったりしました。

Googleplex付近からサンフランシスコ空港に繋がる大通り

Googleplexの一棟と駐車場

こういった国だからこそ、Uber Technologies, Inc.のような企業が生まれ、ライドシェアサービスが一般化したり、電動キックスケーターが人気になると分かりました。実際に、現地でのあらゆる移動はUberで行っていました。目的地の説明や現金のやり取りもなく、非常に楽に移動することができました。

僕が大阪から東京に上京した時も、東京の高層ビルの量や電車の量に驚きましたが、実際に現地で体験してみないことには、国毎・都市毎のカルチャーの違いを理解してサービス企画に活かせないだろうと感じました。

Googleplex

次に驚いたのは、Googleが如何に社員の生産性を高めるために、意識的に職場環境を整備しているかです。

Japan Executive Summit DAY1の最初の発表『Innovation Culture』で、どうやってGoogleが大企業になってもスタートアップ企業のマインドセットを維持しているのかを話していただいたのですが、Googleの信念の1つとしてEnvironment(職場環境)を挙げられていました。

Googleにはオフィスルームから一定の範囲には必ず組織の垣根を超えたコミュニケーションや協働を促すためのカフェスペースが整備されているそうです。社内にバスケットコートやプール、ドッグランがあるのも、組織を超えた交流を促進するもののように思います。

Googleplex内にあるプール(写真、中央奥)

また、ランチをGoogleplexのカフェスペースでいただいたのですが、ビュッフェ形式のランチにはヴィーガン対応メニューが非常に充実していました。寧ろ、ヴィーガン対応していないメニューの方が少ないくらいでした。こういった部分も社員の多様性を受け入れられるよう整備されているのだと感心しました。

P.S. Googleplexの職場環境は非常に羨ましく思えますが、これには責任も伴います。『Innovation Culture』を聞いていると、Google社はカルチャーとして、イノベーションからムーンショット(非常に難しいが、実現すれば多大な効果を期待できる大きな研究や計画)を狙うアプローチを取っていると分かりました。有名な20%ルールも、業務を80%と20%に分けるという考え方でなく、120%頑張ることができるようにするためのルールに聞こえたので、この素晴らしい職場環境には生産性向上で報いる必要があるということでしょう。成果主義の巨大ITベンダーらしいなと感じました。

AI技術活用の展望について

今回のJapan Executive SummitのテーマはAIということで、

  • DAY1では、主にGoogle Cloud×AI
  • DAY2では、主にGoogle広告×AI

中心の話が展開されました。

Japan Executive Summit紹介された機能は、Google Cloud Next '23でも話されたことが中心でしたので、詳細は以下の記事に譲ることにします。

cloud.google.com

僕が着目したポイントを挙げると、AI技術による

  • 非構造化データの活用範囲拡大
  • データ民主化の加速

でした。

非構造化データの活用範囲拡大

最近、Geminiも発表されましたが、LLMやマルチモーダルAIが普及すると、Google Workspaces(Googleドライブ、Gmail、Google Sheetsなど)に記載されたデータ/情報を解釈しデータ活用できるようになります。

japan.googleblog.com

これまで、ビッグデータの活用といえば、データレイクにデータを集約し、データウェアハウスにDB(構造化データ)を整備し分析することが中心でした。しかし、企業には構造化されていないデータが大量にあります。これをLLMやマルチモーダルAIで役立てていくことができるかどうかが、今後の企業成長の鍵になり得ると感じました。

あとは、生成系AIが広告のクリエイティブ(広告素材)となるテキストや画像を量産し、AIが顧客からの反応に基づいて生成した素材の利用を最適化するという、富豪的広告出稿の仕組みが整備されているのも興味深かったです。

今は、企業ロゴや商標などを組み合わせたクリエイティブを生成することは出来なさそうでしたが、もし、それらも他者の権利を侵害することなく実施できるのであれば、特に長期間販売する商品については、広告出稿の大部分を自動化できる可能性があります。KADOKAWAは、商品点数が多く、権利侵害にセンシティブなので、この領域について相性は良くないように感じますが。

データ民主化の加速

Duet AIコンポーザブルD&Aを実現するIF)により、

  • アプリ作成
  • SQL作成
  • 機械学習モデル作成
  • ダッシュボード作成
  • レポート作成

などが自然言語で対話形式でできるようになれば、これまでエンジニアやアナリストに頼っていた仕事をユーザー部門の方々ができる可能性があります。

僕たちの部署は、データ民主化のために以下のようなデータリテラシートレーニングをKADOKAWAグループに提供していますが、そこで学んでいただく内容も変化していくことになるでしょう。

prtimes.jp

engineering.kdx.co.jp

とはいえ、今のAIは平気で嘘をついてくるので、嘘を嘘と見抜けるようになるための素養は変わらず必要になると考えています。ある意味、昔よりもより本質的で学術的な内容の価値が高まっていくのかもしれません。

最後に:出張を終えて

今回の海外出張は2泊5日、行き帰り共に深夜便で、なかなかタフな旅程でした。

短い旅程の中でも、既にアメリカの物価は日本の2〜3倍になっており、相対的に日本人が貧しくなっているということを強く感じました。

逆を言えば、日本は安くても非常に質の良いものが手に入る環境にあるので、この良いものを海外に売り出していくことが重要ということも再認識しました。

KADOKAWAグループは『グローバルメディアミックス with Technology』を掲げております。これからもKADOKAWAグループは、ユーザー・クリエイター・ファンの皆様のためにグローバルなクリエイティブプラットフォーマーを目指していきますし、そのために必要な技術面での支援をKADOKAWA Connectedが行っていきたいと思います。