はじめに
こんにちは。 クラウドサービス部の関森です。
クラウドサービス部は、KADOKAWAグループが利用するITインフラの設計・構築・運用を行っており、Amazon Web Services (AWS) も広く活用しています。
2024年12月2日から6日にアメリカ・ラスベガスで開催された、AWS re:Invent 2024 に参加してきました。 この記事では、現地の様子やセッションの内容について紹介します。
背景:AWS re:Inventとは
AWS re:Inventは、AWSが主催する、クラウド技術に関する世界最大規模の学習型カンファレンスです。 毎年ラスベガスで開催されており、今年で13回目を迎えました。 reinvent.awsevents.com
今年のセッション数は3,068件*1、現地参加者は約60,000人、オンライン参加者は約400,000人でした。 新サービスの発表や事例紹介、既存サービスの深掘りセッションのほか、ワークショップ、展示会、スポーツイベントなど多彩なプログラムが用意されていました。
re:Inventの様子
会場
ラスベガス市内の5つのホテルとカンファレンスホールが会場になっています。
会場内は、たくさんのスタッフがいるだけでなく、看板やデジタルサイネージによりre:Invent特別仕様になっていました。会場間の移動にはシャトルバスやモノレールを利用します。
効率的に回ろうと思い、各日ごとにできるだけ同じ会場や隣接した会場のセッションに参加することを意識しました。 それでも広い会場内を移動したり、空き時間にラスベガス市内やEXPOを見て回ったりしていたら、毎日20,000歩以上歩いていてなかなか疲れました。
また、朝食と昼食は各会場でバイキング形式により提供され、会場・日ごとに異なる内容でした。
EXPO
メインの会場であるVenetianではEXPOが開催されていて、多くの企業が自社のソフトウェアやプロダクトを展示していました。
re:Inventの会期中は基本的に一人で行動していましたが、EXPOや後述のre:Playは、KADOKAWAグループから参加したメンバーと一緒に見て回りました。
AWS Villageでは、各種AWSサービスの紹介や、ハードウェアの展示が行われていました。
Builders’ Fairという、ロボットやゲームなどAWSを使った様々な作品が展示されているエリアもあり、デモを体験できて面白かったです。
EXPOではたくさんのSWAG(ノベルティ)をもらいました。
5K Race
5K Raceは、ラスベガス市内を5km走るというイベントです。
カンファレンスとしては異色のイベントですが、現地ならではの体験を求めて参加してきました。
時差ボケによる寝不足もあってなかなかハードでしたが、朝焼けと共にラスベガスの景色を見ながら走れたことは、良い思い出になりました。
その他展示・イベント
Sports Forumでは、スポーツ分野におけるAWS活用のデモや、体を動かして楽しむためのブースが設けられていました。
近年のトレンドである生成AIを活用したデモの展示も多数ありました。 テキストだけでなく、画像や動画の生成や、マルチモーダルAIの実用化が進んでいる印象を受けました。
また、re:Invent外のイベントとして、日本からの参加者との交流会にも参加し、AWSを中心とした技術やビジネスに関する情報交換を行うことができました。
日本からre:Inventに参加した人数も非常に多く、約1,700人参加していたようです。re:Play
re:Playは、最終日前夜に開催されるアフターパーティーです。
アーティストによるライブやお酒を楽しめるフェスのようなイベントでした。
セッション紹介
KEY002 | CEO Keynote with Matt Garman
AWSのCEOであるMatt氏による基調講演です。
中でも、「Building blocks」という概念の話が印象的でした。 「Building blocks」とは、各分野で最高のコンポーネントをサービスとして提供し、それらを組み合わせることによりユーザーが多様なアプリケーションを構築できるという、AWSの考え方です。
また、基盤モデルである Amazon Nova や、Amazon Q Developer上でのドキュメント生成、コードレビュー、ユニットテスト生成機能の追加 や、AI開発の統合プラットフォームである Amazon SageMaker Unified Studio などの生成AIに関する新サービス・新機能が複数発表されました。
その他にも、高可用性サーバレス分散SQLデータベースである Amazon Aurora DSQL や、マルチリージョンで強い整合性を持つ Amazon DynamoDB global tables などの発表もありました。
朝8時からにもかかわらず、多くの人々が集まり大盛況でした。
STG212 | What’s new with Amazon S3
Amazon S3 に関する新機能紹介のセッションです。
その中でも、基調講演で発表されていた Amazon S3 Tables と Amazon S3 Metadata を紹介します。
S3 Tablesは、Apache Iceberg 形式のテーブルデータを保存できるストレージサービスです。 テーブルデータは、Amazon Athena、Amazon Redshift などからクエリすることが可能です。
S3 Metadataは、S3バケット内のオブジェクトごとにメタデータは付与する機能です。 メタデータはS3 Tablesに保存され、リアルタイムで更新されます。 オブジェクトサイズ、作成日などの21個のシステムメタデータや、ユーザーが定義できるカスタムメタデータを付与することが可能です。
これらのメタデータを使用したクエリの例を紹介していました。
LIST APIを叩くことなくバケット内のオブジェクトをリストしたり、
SELECT bucket, key, storage_class, user_metadata FROM aws_s3_metadata.my_metadata_table WHERE key LIKE ‘{SOME_PREFIX}%’;
Amazon Bedrockにより生成した画像のみ抽出したりすることが可能です。
SELECT bucket, key, user_defined_metadata, row_type FROM aws_s3_metadata.my_metadata_table WHERE user_defined_metadata[`content-source`] = AmazonBedrock;
データ分析に適していると紹介されていましたが、画像や動画を検索する機能を含むアプリケーションの実装においても便利に使えそうかなと思いました。
AIM332-NEW | [NEW LAUNCH] Explore the power of Amazon Nova multimodal FMs
基調講演で発表された基盤モデルであるAmazon Novaを利用して、Amazon Bedrock 上で生成AIアプリケーションを作成するワークショップです。
新発表されたNovaに関するワークショップということで、注目度が高く予約枠は埋まっていました。 開始の30分以上前に並ぶことで、なんとか当日参加枠で参加することができました。
Agents for Amazon Bedrock と AWS Lambda を組み合わせてアプリケーションを構築し、台帳として Amazon DynamoDB を使用することにより、ホテル予約チャットボットを作成するという内容でした。
マルチモーダル理解が可能なNova Proモデルを使用して、会期中に実際に滞在したホテルのマップ画像を学習し、「ホテル内のお土産屋さんはどこにありますか?」という質問にも回答できるようになっており、実用的で驚きました。
また、このワークショップに限った話ではないですが、ワークショップの資料がわかりやすかったです。 Jupyter Notebookに書き込まれたコマンドを順番に実行するだけで構築できたり、コマンド実行やAWSリソースの作成にかかる時間が記載されていたりなど、細かい部分のホスピタリティが高いなと感じました。 普段の業務における手順書の作成などに活かしていきたいです。
おわりに
AWS re:Invent 2024に現地参加してみて、規模感が凄まじいなというのが一番の感想です。 会場や参加者数など、何もかもが大規模で驚きました。 こんなにも多くの企業や人々がAWSに関心を持っているということを改めて実感しました。
セッションの学びももちろんですが、現地の雰囲気を体感できたことがとても刺激的であり、貴重な経験になったと感じています。
今回得られた知見を今後の業務やキャリアに活かしていきたいと思います。
*1:re:InventのCatalogページから一覧できる数。https://registration.awsevents.com/flow/awsevents/reinvent24/sessioncatalog/page/page